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STORY

玉村 文平
ブランドコミュニケーション
シニアディレクター
Now or Never -今決めなければ二度とないかもしれない

GHITとの縁は、2011年に東京大学で行われたグローバルヘルス・リーダーシッププログラムというサマープログラムに参加したのがきっかけです。そこで当時エーザイに所属していたスリングスビーが講師として招かれており、グローバルヘルスに特化した製品開発に関するビジョンや、グローバルなパートナーシップで製品開発を行うダイナミズムに感銘を受けました。もともと私は、日本で薬学部を卒業した後すぐに、アメリカの公衆衛生大学院に進学したのですが、その当時から創薬とグローバルヘルスの分野を繋ぐことに興味を持っていました。自分がまさにやりたいと思っていた仕事を実現している人に出会ったことでワクワクしました。その後、スリングスビーと何度か会う機会があり、GHITの立ち上げの話や、「世界に通用するグローバルヘルスの機関を作りたい。」という志に動かされ、GHITへの参画を決めました。後にも先にもこんな機会に巡り合うことはなかなかないだろうとの思いで即決しました。

私が入った当時は、スタッフはまだ数人で、それこそ何もないゼロからのスタートでしたが、高名な理事をはじめ、ユニークでプロフェッショナルな経験を持ったスタッフと働くことができることへの楽しみと、かねてから望んでいたグローバルヘルスの仕事に携わることができるという思いで、非常に胸が踊ったのを覚えています。

何も知られていない組織のブランドを作る

私が担当するのは、組織のブランディングや、様々なメディアを使った戦略的なコミュニケーションです。元々、広告・マーケティングの会社にいましたので、製品やサービスに関するブランドコミュニケーションには馴染みがありましたが、まだできて間もない、ほとんど知られていない組織をどのようにブランディングすればよいのか、いきなり大きな壁にぶつかりました。まだグローバルヘルスという言葉や概念も日本にはそれほど定着していない時期でしたし、ましてやグローバルヘルスの製品開発(R&D)も、それを支援するためのGHITのユニークなビジネスモデルも、全てが新しいことばかりで、どのようにコミュニケーションするかを考える必要がありました。

GHITはB to CのビジネスモデルではなくB to Bのビジネスモデルであることと、GHITは製品開発に投資するファンドであって、製品開発を自分たちで行うわけではありません。自分たちで製品を持たない組織が、社会的にどんな新しい価値を生み出すのか、そして、その価値をどのように、誰に伝えるべきなのか悶々と悩みましたが、まずは、GHITを支援して下さる資金拠出パートナーからの信頼獲得を当面の目標と見据えて、ブランディングの方向性を定めました。

縁の下の力持ちとしての役割

5年たった今でも、GHITのブランドの価値を高めることに焦点を当てています。なぜGHITがブランディングを行うかと言えば、マッチングによる資金調達、日本のイノベーションを活用した製品開発の推進、またGHITに良い人材に入ってもらうための人事戦略の観点からです。もちろんブランディングの要素の一つでもある、デザインに関しても個人的にこだわりはありますが、それに加えて、組織のビジョンやミッション、ビジネスモデルやガバナンスの仕組み、組織や個人の発言や対応、イベントでの体験の一つ一つが、外部の人にとってのGHITブランドになると信じてやっています。

GHITはあくまで製品開発に投資する側の機関ですので、製品開発を行う研究者や医療従事者、実際に臨床試験に参加してくださる方々が主役だと思っています。そういう意味で、私たちが果たすべき役割は、表舞台に出なくても、縁の下の力持ちとして研究者や現場の人々を支えることだと考えています。また、日本と海外を、研究の面でも、ネットワークの面でも繋ぐハブとして、オープンイノベーションを触媒する機関として機能することが求められていると考えています。

そうした方々を裏方で支援しながら、実績を積み重ねて、積極的に対外的に情報発信をしていくことで、GHITの資金拠出パートナーやスポンサーからの信頼を得ることにつなげるとともに、新たな支援を獲得するという好循環を生み出すことがブランディングだと思っています。

少数精鋭でインパクトを出す

GHITは15人程度の小さな組織ですので、一人ひとりが担う仕事の量や質、スピードは高いレベルが求められます。GHITは非営利機関ではありますが、働き方という点では極めて企業に近いと思います。国境を越えてプロジェクトが動いていますので、プロジェクトマネジメントはすべての根幹ですし、ステークホルダーのニーズや考え方を理解して、戦略をたててコミュニケーションを行い、行動を促すという意味ではマーケティング的な発想が必要不可欠です。非営利機関は一般的にこれらの点が弱いと思われがちですが、GHITはそうしたイメージを払拭していきたいですし、少数精鋭でもインパクトが出せる組織でありたいと思います。

一方で、こうした少数精鋭でもインパクトが出せるのは、国内外の様々な人々に支えられているからこそできるということを忘れてはならないと思います。投資事業のみならず、バックオフィスの業務やイベントの運営など、昼夜問わずGHITをサポートして下さる方々の支援なくして、ここまでやってくることはできませんでした。そうした方々とのパートナーシップは本当に大事にしなければならないと実感しています。


GHITのブランディングガイドライン
パートナーの団結力

2017年6月に記者発表会を行い、次期5年間に対するコミットメントが発表されました。GHITの資金拠出パートナーの代表が集まり、グローバルヘルスの製品開発を一丸となって継続して進めるという強いメッセージに純粋に感動しましたし、セクターを超えた団結力や一体感を改めて実感しました。設立当初の段階では「本当に製品開発を進められるのか?」と疑問に思った方もいらっしゃったと思いますし、それが当然の反応だったとも思います。しかし、そこから5年経って、資金調達、製品開発、政策提言(アドボカシー)などの面でも、GHITに期待されることが次第に大きくなっていく中で、ステークホルダーからも徐々に信頼を得られるようになってきたと感じています。と同時に、その責任の大きさや重大さも実感しており、今後求められる仕事の質やレベルもさらに改善していかなければならないと痛感しています。

次の5 年間を見据えた活動

やったことのないことに挑戦し、失敗し、改善していくプロセスを高速で繰り返したことで、スタッフにも大きな自信がつきましたし、私も個人的に成長ができました。GHITは比較的若い組織ですが、機動力と創造性と情熱があります。スタッフの国籍や経歴も多様ですし、チームでできることの幅も広がっています。こうしたチームを、評議委員、理事、選考委員、アドバイザーが戦略やガバナンスの観点でリードしてくれていますので、次の5年間に関しても自信を持って進むことができると思います。

当面の目標としては、GHITが投資する製品を確実に世に送り出し、そうした新薬を待つ開発途上国の人々に届けることに尽きると思います。そうしたニュースを、日本の人たちにも伝える-このコミュニケーションを実現させたいと思っています。北里研究所の大村智特別栄誉教授が顧みられない熱帯病の新薬発見に大きく貢献され、2015年にノーベル賞を受賞されたのは記憶に新しいですが、それに類似する新薬開発の事例がまさに数年後に実現することを期待しています。こうした実例があれば、普段グローバルヘルスに全く接点がないような方でも、日本が関わる活動に共感しやすいですし、活動の意義をより深く理解して頂けるのではないかと思います。




(写真上)2017年6月開催された、GHIT第二期に向けた記者発表会
(写真下)タンザニアで実施された、小児用の住血吸虫症治療薬の臨床試験実施校訪問
GHITならではの醍醐味

GHITの醍醐味は、ビジネスモデルに起因するところが大きいですが、資金調達においても、製品開発においても、日本と海外のパートナーシップが基盤になってインパクトを生み出すところにあります。日本中心で考えるのではなく、常に世界という観点で物事を考えさせられます。評議会や理事会などでも非常にハイレベルな視点でディスカッションが行われているのを見ると、スタッフの視点は一段も二段も上に引き上げられます。

またGHITは官民パートナーシップですので、政府、民間企業、財団それぞれの事業に対する考え方や文化が交差する地点だということです。そこには創造性やダイバーシティ、新しい価値観が生まれます。こうした点が、官民パートナーシップならではの醍醐味だと思います。

光が当たらない所に光をあてる

私がこの分野に携わりたいと思った一つのきっかけは、大学院時代に国連児童基金(UNICEF)のインド・ムンバイオフィスでインターンをした経験が根本にあります。当時、HIVの小児患者のサポートとケアについてリサーチを担当していました。ある日、毎日HIVの患者が200人くらい来る大きな病院で、おじいさんと姉妹が来院していました。お父さんとお母さんはHIVで亡くなり、おじいさんが姉妹の面倒を見ていました。4歳の妹の方がHIVに感染していましたが、本人はなぜ病院に来ているか、なぜ薬を飲み続けなければならないのか、まだ理解できるような年齢ではありませんでした。このような話をいろんな所で聞き、感染症がその人の人生や社会に与える影響力の大きさに衝撃を受けました。そうした人々は社会的に弱い立場にいる人ですが、支援は必ずしも十分ではありませんし、時には全く社会から顧みられていない状況も数多く目にしました。HIVに限らず、GHITが対象にする熱帯病などは、程度の差こそあれ似たような状況は少なくありません。GHITのような組織が、世界中のパートナーとともに、脆弱な立場にいる人たちに対して何か貢献できるのは光栄なことだと思います。


※このインタビューは2017年8月に実施されました。

国連児童基金(UNICEF)のインド・ムンバイフィールドオフィスでのインターン
略歴
玉村 文平
ブランドコミュニケーション
シニアディレクター

GHIT Fundのブランディングを統括。外資系広告代理店、ソーシャルベンチャーにて戦略プランナーとして勤務し、国際機関、製薬企業、大学、研究機関等をクライアントとしたマーケティング・コミュニケーション戦略立案、実施に携わる。2013年より現職。東京薬科大学薬学部を卒業後、ボストン大学公衆衛生大学院にて公衆衛生修士号(MPH)を取得。

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エクスターナル エンゲージメント
シニアマネージャー

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シニアディレクター

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投資戦略 兼
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